定年退職をして会社を辞めた高齢者でも、人生を謳歌するためにお金を借りたいというときがありますよね。
孫が遊びに来るとなると、少しでも喜んでもらうために準備したいですし、美味しいものを食べさせてあげたい。
ただ、高齢者はお金を借りにくい属性のひとつです。
そんなお金を借りにくい高齢者が、お金を借りたいときにはどうすればいいのでしょう?
ここでは年金受給者がお金を借り入れするための方法についてご紹介します。

このページで分かること
高齢者でも収入があればカードローンなどを利用できますが、それらを利用できるのは長くても69歳までです。
それより高齢になると、融資をしてくれる金融機関はありませんので、年金担保融資や生活福祉資金貸付制度を利用してお金を借りましょう。
不動産担保型生活資金やリバースモーゲージのように、住宅を担保にお金を借りることもできます。
ただし最終的には住宅を手放すことになりますので、必ず家族と相談して決めるようにしましょう。
その他の借入れも、返済できない場合には子どもに借金が相続されますので、無理のない借入れを心がけましょう。

高齢者が金融機関からお金を借りにくい理由
金融機関からすると高齢者は融資対象として2つのリスクがあります。
それぞれのリスクと借りにくい理由について、詳しく見ていきましょう。
収入が少ない高齢者が借りにくい理由
年金収入しかない高齢者の場合、モデル世帯の年金月額は約22万円です。
ところが、60〜69歳の世帯での平均支出月額は約28万円という調査結果があります。
要するに年金受給世帯は、基本的に赤字になっているわけです。
赤字になっていなくても、余裕のない生活をしています。
そういう人にお金を貸すと、どういうことになるのかは明白ですよね。
年金の中から返済しようとすると生活が圧迫されます。
生活を維持しようとすれば返済が滞ります。
いずれにしても、また別のところから借りる必要性が発生します。
すると最終的には返済困難な多重債務者になって、自己破産などの債務整理をすることになります。
自己破産をされると金融機関は返済残金がすべて損失になりますので、収入が不足しやすい高齢者への貸付けを避けています。
健康上の不安がある高齢者が借りにくい理由
もし高齢者で年金以外にも収入があるなら、融資を受けられるのではないかと期待しますよね。
でも、高齢者にはもうひとつのリスクがあります。
それは健康上のリスクで、いつまで生きられるか分からないという問題です。
日本人の平均寿命は約84歳ですが、それよりも若くして亡くなることも当然あります。
お金を借りたのに、ほとんど返済することなく亡くなられたというようなこともあります。
相続人が返済してくれればいいのですが、相続放棄をされると借金の回収ができません。
返済されるかどうかがまったく分かりませんので、金融機関はそのようなリスクをあえてとることはなく、高齢者というだけでお金を貸さない銀行や消費者金融がほとんどです。
多くの金融機関が融資年齢に上限を設けているのはこのためです。

高齢者でも収入があればお金を借りることができる
高齢者でもまだまだ働いている人もいて、むしろ仕事を辞めたいのに人手不足で辞めさせてもらえないという人もいますよね。
そのように仕事をして年金以外の収入がある人なら、お金を借りることはそれほど難しくありません。
ただし、1つ問題があります。
それはローン商品の年齢制限です。
ほとんどの金融機関が60代までで、70歳を超えて融資を受けることはできません。
いくら収入があっても、年齢制限を超えての借入れはできませんので、注意してください。
収入のない高齢者や年齢制限を超えた高齢者がお金を借りる方法
収入がない高齢者や年齢制限を超えた高齢者は、お金を借りることが難しいことをお伝えしましたが、それでもお金を借りたいというケースもありますよね。
70代ならまだまだ元気ですから何かと出費が必要ですし、生活を楽にする設備なども導入するのにもお金がいります。
そういう場合にも、ちゃんとお金を借りる方法があります。
一般的なものだけでもこの4つの借入方法があります。
それぞれの借入方法について詳しく見ていきましょう。
年金担保融資制度を利用する
年金担保貸付制度・労災年金担保貸付制度は、国民年金、厚生年金保険または労働者災害補償保険の年金を担保として融資することが法律で唯一認められた制度です。
保健・医療、介護・福祉、住宅改修、冠婚葬祭、生活必需物品の購入などの支出のために一時的に小口の資金が必要な場合にご利用いただけます。
年金受給者がお金をかりるのであれば、年金担保融資制度がおすすめです。
通常は年金を担保にお金を貸すことは禁止されていますが、この年金担保融資制度だけは例外としてお金を借りることができます。
受給している年金によって利用できる機関が次のように分かれます。
会社員や自営業者だった人:福祉医療機構
公務員だった人:日本政策金融公庫
いずれも年金から天引きでの返済となり、年金から一定額が差し引かれます。
その点を理解した上で利用しましょう。
また、審査にも時間がかかりますので、余裕を持って申し込みしましょう。

生活福祉資金貸付制度を利用する
「生活福祉資金貸付制度」は、低所得者や高齢者、障害者の生活を経済的に支えるとともに、その在宅福祉及び社会参加の促進を図ることを目的とした貸付制度です。(中略)
生活福祉資金の貸付けの対象となる世帯は下記のとおりです。
- 低所得世帯…資金の貸付けにあわせて必要な支援を受けることにより独立自活できると認められる世帯であって、必要な資金を他から借り受けることが困難な世帯(市町村民税非課税程度)。
- 障害者世帯…身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けた者(現に障害者総合支援法によるサービスを利用している等これと同程度と認められる者を含みます。)の属する世帯。
- 高齢者世帯…65歳以上の高齢者の属する世帯(日常生活上療養または介護を要する高齢者等)。
民間の金融機関から借りられない人のためのセーフティーネットとして、国が用意しているのが生活福祉資金貸付制度です。
低所得者世帯・障害者世帯・高齢者世帯への融資を行っています。
高齢者世帯は65歳の高齢者が属する世帯が対象になります。
高齢者として借りられるのは、引っ越しやリフォーム、福祉用具の購入、医療費などに限られます。
ただ連帯保証人をつければ無利子で借りることができ、連帯保証人がいない場合でも年1.5%の低金利で借りることができます。
高齢者でも低所得世帯として認められた場合には、総合支援資金として生活費を借りることもできます。
この場合に利用できるのは、65歳未満で1年以内に就労実績があり、就労能力や常用就職の意欲がある人に限られます。
また、生活福祉資金貸付制度には、不動産担保型生活資金も用意されています。
土地の評価額が1500万円以上の一戸建て住宅に住んでいる場合には、それを担保に土地の評価額の70%、月額30万円まで借りることができます。
推定相続人の同意が必要で、借受人が亡くなった場合、3ヶ月の据置期間後、一括返済を求められるなどの制約がありますが、このような借り方もあるということを覚えておきましょう。

日本政策金融公庫の女性、若者/シニア起業家支援資金を利用する
「女性、若者/シニア起業家支援資金(新企業育成貸付)」などのご融資を通じて、事業開始後おおむね7年以内の女性の方、35歳未満か55歳以上の方のお手伝いをさせていただいております。
高齢者が事業を始めるのであれば、日本政策金融公庫の「女性、若者/シニア起業家支援資金」を使ってお金を借りることができます。
利用するには事業計画書などを用意する必要がありますが、最大7,200万円(運転資金は4,800万円)まで借りることができます。
生活資金などに利用できませんが、新しく仕事を始めようと考えている高齢者の方は、このような国の支援制度も活用して、資金調達を行ってください。
リバースモーゲージを利用する
この商品は、ご自宅やご所有の不動産を担保に、セカンドライフに必要なご資金をお借り入れいただくものです。
一度にまとまった金額をお借り入れいただくことも、必要な時に必要な金額をお借り入れいただくことも可能です。また、一般的な住宅ローンなどとは異なり、毎月元金をご返済いただく必要がありません。お亡くなりになった時に元金とお利息をまとめてご返済いただく方法と、元金は据え置いて、お利息だけ毎月お支払いいただく方法をご用意しております。
不動産担保型生活資金と同じように、住宅を担保にお金を借りる方法として、利用者が増えているのがリバースモーゲージです。
リバースモーゲージは民間の金融機関が取り扱う金融商品で、家の価値に合わせて融資を行ってくれます。
リバースモーゲージは、自宅を売却することを前提に融資を受けますので、毎月の返済がありません。
このため、相続する人のない家で暮らしている高齢者に適した、お金の借り方のひとつです。
ただし、こちらも推定相続人の同意が必要で、家族の理解を得られないと利用できないというデメリットがあります。
高齢者になったけど、子どもからの支援を受けられない、支援を受けたくないという人に適した借り方ですが、家というのは大切な財産です。
利用する場合には、きちんと家族と話し合ってから利用してください。

高齢者でもお金を借りる方法はいくつもある
高齢者はお金を借りにくい属性とされていますが、年金収入がありますので、お金が借りたいときの借入先は思った以上にたくさんあります。
少なくとも年金担保融資がありますので、無理のない借入れなら、思ったよりも簡単に借りることができます。
ただし、高額な借入れをした場合に、それを完済するまでに亡くなってしまうと、その借金は子どもたちに引き継がれてしまいます。
どうしてもまとまったお金が必要なときや、リバースモーゲージのように住宅を担保にしてお金を借りるときには、家族と相談するようにしてください。
また、お金を借りたときには、どこからいくら借りているのかを、誰が見ても分かるようにリストアップしておくことも忘れないようにしましょう。
高齢者がお金を借りるというのは、自分だけの問題で済まないということも頭に入れておいてください。