日本では年金を担保にお金を融資することが禁止されています。
ただ、それでは年金受給者が闇金業者などからお金を借りてしまう可能性があるということから、年金担保貸付事業制度を利用した貸付けに限り、年金を担保にお金を貸すことを認めています。
ここではそんな年金を担保にお金を借りることができる年金担保貸付事業制度について、分かりやすくご紹介していきます。
年金収入しかないけど、どうしてもお金が必要になったという人は、ぜひ参考にしてください。

このページで分かること
年金担保貸付事業制度は、公務員だった人が利用できる日本政策金融公庫と、会社員や自営業者だった人が利用できる福祉医療機構が、年金を担保にお金を借りることができる制度です。
この制度以外では年金を担保にお金を貸すことが禁止されています。
いずれの年金担保貸付も金利が低く、安定した生活を送っていくための資金として幅広く利用できます。
返済が年金からの天引きですので、返済忘れがないのは嬉しいところですが、無計画な利用は返済が生活を圧迫する可能性がありますので、きちんと返済計画を立てて利用する必要があります。
年金担保貸付事業制度の基礎知識
年金担保貸付事業制度は、国民年金や厚生年金、労働者災害補償保険などの年金を担保としてお金を貸す制度です。
この制度以外で、年金を担保に融資を行うことは認められていません。
利用条件など細かな設定がありますが、金融機関のローンよりも金利が低いという特徴があります。
ここではまず、年金担保貸付事業制度についての基本情報についてご紹介します。
すべてを把握する必要はありませんが、まずは一読しておいてください。
年金担保貸付事業制度の種類
年金担保貸付事業制度は2つの融資機関があり、合計3つの融資制度が設けられています。
福祉医療機構
年金担保貸付 | 厚生年金・国民年金・船員保険年金 |
労災年金担保貸付 | 労働者災害補償保険年金 |
融資金額 | 10万〜200万円 (生活必需品の購入は10万〜80万円まで) |
日本政策金融公庫
恩給・共済年金担保貸付 | 恩給・災害補償年金・共済年金・共済組合が支給する厚生年金 |
融資限度額 | 担保とする年金の年額の1.6年分以内で250万円 (生活資金は100万円) |
少し分かりにくいかもしれませんが、公務員だった人が利用できる融資機関が日本政策金融公庫で、その他の人たちが利用できるのが福祉医療機構だと考えてください。
ちなみに、福祉医療機構で借りる場合には連帯保証人が必要です。
そもそも、この制度は公務員だった人だけに与えられていたものでしたが、不公平であるということから、それ以外の年金受給者でも利用できるようにと、福祉医療機構の年金担保貸付事業制度が認められました。

年金担保貸付事業制度を利用できない人
この年金担保貸付事業制度は、年金受給者であれば誰でも利用できます。
ただし、福祉医療機構からの借入の場合、下記に該当する人は利用できません。
- 過去の利用で任意繰上返済し、融資決定時の完済予定日に達していない場合
- 生活保護受給者
- 生活保護廃止後5年を経過していない場合
- 融資金の使い道がギャンブルや公序良俗に反するもの
- 年金支給が全額停止されている場合
- 同一年金で借入残高がある場合
- 現状届や報告書が未提出や提出遅延の場合
- 特別支給の老齢厚生年金受給者で65歳時の年金決定手続き中の場合
- 反社会勢力の該当者または関係者
日本政策金融公庫はこのような規定はありませんが、審査の結果、融資を断られることもあります。
いずれの年金担保貸付事業制度も、必ず借りられるわけではないということを覚えておきましょう。
年金を担保にお金を借りるメリット
- 低金利でお金を借りることができる
- 借りたお金の使用用途が幅広い
年金を担保にお金を借りたときのメリットは2つあり、最も大きなメリットは金利が低いということです。
年金担保貸付の種類ごとの金利は下記のようになります。
年金担保貸付:年2.8%
労災年金担保貸付:年2.1%
恩給・共済年金担保貸付:年0.36% or 年1.71%
一般的なカードローンで借入れが100万円以下の場合には、年15〜18%程度ですので、それと比べるとかなり金利が低いのが分かります。
さらに、保健・医療、介護・福祉、住宅改修、冠婚葬祭、生活必需物品の購入など、使用用途が幅広いというのもメリットのひとつです。
旅行などの娯楽には使えませんが、生活をしていく上で必要なものへの利用にほとんど制限がなく自由です。
年金を担保にお金を借りるための手順
年金担保貸付事業制度でお金を借りるための手順について、見ていきましょう。
年金担保貸付事業制度でお金を借りる流れ
- 相談する
- 申込み
- 申込み内容の審査
- 審査に通過したら指定口座に振り込み
福祉医療機構で借りる場合には年金を受給している金融機関、日本政策金融公庫で借りる場合には日本政策金融公庫の窓口で相談をして、申込みを行います。
申込内容に対して審査を行い、問題なければ融資を行ってもらえます。
福祉医療機構で借りる場合、ゆうちょ銀行、農協、労働金庫の窓口では相談や申し込みができませんので注意してください。
年金担保貸付事業制度の申し込みに必要な書類
福祉医療機構の年金担保貸付事業制度の申し込みには次の書類が必要です。
- 年金証書
- 借入申込書
- 現在の年金支給額証明書(年金振込通知書や支給額変更通知書など)
- 実印と印鑑証明書
- 運転免許証など本人確認書類
- 資金の使途を確認できる見積書や請求書
日本政策金融公庫で借りる場合の書類については公表されていませんので、相談をするときに必要書類について確認しておきましょう。

年金担保貸付事業制度の返済方法
年金担保貸付事業制度の返済方法は借入先ごとに違いますが、共通しているのは年金から天引きされるという点です。
それを踏まえたうえで、それぞれの返済方法を見ていきましょう。
福祉医療機構への返済方法
年金支給機関から支給される年金のうち、自分で指定した額(1万円単位)が年金支給機関から福祉医療機構に直接支払われます。
支給額から返済額を引いた金額を、年金として受け取ることができます。
返済額の上限は1回あたりの年金支給額の1/3以下で、下限は1万円となります。
例えば年金受給額が1回で27万円だった場合、1万〜9万円の範囲内で返済額の設定をします。
日本政策金融公庫への返済方法
支給機関から支給される恩給や共済年金のうち、一定額を返済金として公庫が受け取ります。
支給額から返済額を引いた金額を、恩給や年金として受け取ることができます。
平成31年1月3日以前は全額返済でしたが、現在は福祉医療機構と同様に定額返済に変更されています。
返済額がいくらになっているのかは、公表されていません。

年金を担保にお金を借りるときの注意点
年金を担保にお金を借りる場合には、下記の点に注意してください。
気をつけなくてはいけないのが、申し込みから融資開始まで時間がかかるという点です。
カードローンのように即日審査・即日融資というわけにはいきません。
福祉医療機構の場合は、申し込みから融資開始まで約4週間かかります。
急ぎでお金が必要な場合は、別の方法で調達しましょう。
ただし、闇金業者などは絶対に利用しないでください。
また福祉医療機構で借りられるのは平成34年3月末までです。
それ以降で、家計に関する支援が必要な場合には、地域の自立相談支援機関に相談し、低所得世帯や高齢者世帯に該当する場合には、生活福祉資金貸付制度を利用しましょう。
そして、借り入れする上で必ず心がけなくてはいけないのが、計画的に利用するということです。
年金額は生活をしていく上で、それほど余裕がない金額になっているかと思います。
その状態で毎月数万円の返済が発生すると、生活が苦しくなってしまいます。
月々の返済は多少利息が大きくなっても、無理のない金額に設定して、生活にある程度のゆとりを持たせるようにしましょう。
困ったときのセーフティーネットとして年金担保貸付事業制度を活用しよう
年金担保貸付事業制度は、低金利でお金を借りることができるため、とてもありがたい制度ですが、借りたお金を完済するまで追加融資ができません。
カードローンのように手軽に利用できる仕組みでもありません。
あくまでも、どうしても必要になったときのセーフティーネットという位置づけですので、基本的には支給される年金をコツコツと積み立てておき、いざというときでも年金担保貸付事業制度を利用せずに対応できるのが理想です。
もちろん、制度としてあるものですので利用するのは問題ありません。
利用するときには、返済で生活が圧迫されないように、無理のない借入れ、無理のない返済を心がけて年金担保貸付事業制度を利用してください。