交通事故で入院をしたけど病院に払うお金がない。
遠方で暮らす親が倒れてしまい帰省したいけど航空券を買うお金がない。
そういう緊急時はすぐにお金を調達しなくてはいけませんので、銀行や消費者金融などで審査を受けている場合ではありませんよね。
そういうときに、頼りになるのが勤務先です。
意外と知られていませんが、会社にはお金を貸付する制度や前払いするシステムが用意されています。
ここでは、どのようにすれば、勤務先からお金を借りることができるのかをご紹介していきます。
このページで分かること

確かに従業員貸付制度を設けているところもあるが、融資までに時間がかかるため急いでいる人には向いていない。
会社勤めをしている人なら、従業員貸付制度や前借りを利用して勤務先からお金を借りることができます。
ただし、利用できる条件が限られているため、何にでも使うことができず、従業員貸付制度の場合には融資まで1〜2週間もかかります。
「借りる」以外にも、給料を前払いしてもらうことも可能です。
こちらも利用するための条件がありますが、自分が働いた分を給料日よりも先に払ってもらうだけですので、利息も返済も必要ありません。
こちらは労働者の権利ですので、条件を満たしていれば確実に資金調達できます。
勤務先からお金を借りる方法
- 従業員貸付制度
- 前借り
勤務先からお金を借りる方法はこの2つです。
この2つに大きな違いはなく、従業員貸付制度は前借りのルールを明文化して制度にしたものだと考えてください。
いずれも、会社に対して借金をするとい点での違いはありません。
ただし、従業員貸付制度を導入している会社なら、条件を満たしていれば従業員の権利として借りることができますが、前借りは社長や店長などの責任者の判断によって、認められるかどうかが決まります。
ちなみに、ここでいう「前借り」というのは「前払い」とは違います。
前払いについては後ほど詳しく説明しますので、ここでは「前借り=まだ働いていない分の給料を借りる」ということだと考えてください。
従業員貸付制度を導入しているのは大企業がほとんどで、中小企業の場合では前借りをすることになります。
ただ、前借りにもメリットがあります。
従業員貸付制度は明文化されていますので、条件を満たした人しか借りられませんが、前借りは責任者の裁量で貸付けが決まります。
従業員貸付制度で借りられないようなケースでも、前借りなら貸してもらえることもあります。
ただし、会社に対する借金ですので、きちんと借用書を作り、利息も払う必要があります。
金利や返済期限に関しては、上司と相談して決めることになります。
従業員貸付制度の基礎知識

従業員がお金に困っている場合、家計のことを考えて悩んだり、仕事が手に付かないこともある。
そういった事態を避けるために、この制度があるんだ。
勤務先からお金を借りる方法の従業員貸付制度について、もう少し詳しく説明していきます。
従業員貸付制度は会社の福利厚生のひとつとして導入されています。
従業員がお金に困っている時に、会社が低い金利でお金を貸してあげて、仕事に集中してもらうことが目的です。
従業員貸付制度を利用する条件
従業員貸付制度はどんな人でも利用できるというわけではなく、回避できない理由でお金に困り、それによって業務に支障が出る場合にのみ借りることができます。
その代表的な例が下記になります。
- 病気や事故などで入院するための費用
- 災害や火災などで家を修復するための費用
- 身内が不幸になったときのお葬式費用
- 泥棒に入られたときの生活費
例えば、海外旅行に行きたいときや、車を買いたいというような場合には業務に関係ありませんので、この制度を利用することができません。
どのような条件になっているかは、会社ごとに違いますので、自社の規約を確認してみましょう。
借りられる金額は会社によって違う
会社の福利厚生制度ですので、いくらまで借りることができるのかは会社によって違います。
30万円や100万円といった金額で設定していることもあれば、給料の2ヶ月分までといった規定を設けている会社もあります。
大手企業の場合は、住宅購入資金として従業員貸付制度を利用できるケースもあり、この場合には1000万円以上借りることができることもあります。
こちらも自社の規約を確認して、いくらまで借りられるのかをチェックしておきましょう。
低金利で借りることができる
福利厚生とはいえ、税金などの関係から無金利での貸付けができません。
このため、従業員貸付制度を使って勤務先からお金を借りる場合には、利息が発生します。
こちらも、会社ごとに違いますが、年2〜4%程度が一般的です。
長期入院のため、従業員貸付制度を利用する場合は金利が年1%、新車購入資金で従業員貸付制度を利用する場合は金利が年2.5%といったように、借りる理由によって金利を分けている会社もありますが、共通しているのは低金利ということです。
消費者金融で30万円借りると金利が年18%になりますので、かなり低金利で借りられることが分かります。
これは、会社は貸付けで儲けようとしているわけではなく、あくまでも社員が気持ちよく働ける環境を整えるために、従業員貸付制度を導入しているためです。
返済は給料天引き

返済は給料天引きがほとんどだから、最初から返済計画をどうしようと悩むことはない。
ただ毎月のことだから、長期にしすぎると余計に家計が苦しくなる場合もあるんだ。
返済方法についても会社ごとに規定が違いますが、ほとんどの会社は給料天引きで、毎月1万〜2万円程度になるように設定されています。
会社によっては「24回払い」といったように最初から決められていることもありますし、規定の範囲内で自分で設定できることもあります。
自分で期限を決められる場合、長くしすぎると低金利とはいえ利息が増えていきます。
無理のない範囲を心がけながらも、早期返済を意識して期限を決めるようにしましょう。
融資にかかる時間が長い
この従業員貸付制度の唯一のデメリットが、融資にかかる時間が長いということです。
緊急時に使いたいのに、実は貸してもらえるまで1〜2週間かかります。
会社によっては、緊急時には即日貸付けをしてくれる規定が用意されていることもありますが、大企業は書類での処理を行いますので、どうしても承認作業などに時間がかかります。
規定されていないイレギュラーな対応はしてもらえませんので、基本的には緊急性の高い借入れには利用できないと考えておきましょう。
従業員貸付制度を利用していても退職できる
従業員貸付制度に限らず前借りもそうですが、勤務先からお金を借りると完済まで会社を辞められないと思われていますが、そんなことはありません。
職業選択の自由が認められていますので、社内規定にどう書かれていても、憲法が優先されますので退職は自由です。
まだ返済しきれていないお金に関しては、振り込みで返済になるケースと、退職時に一括返済を求められるケースの2つがあります。
高額な借入れをしていると、返済できなくて金融機関からの借り換えをしなくてはいけなくなりますので注意してください。
前払いなら利息も返済も不要
勤務先からお金を借りることができるかどうかは、勤務先の制度や判断に委ねるしかありませんが、確実にお金を調達できる方法が1つあります。
それが給料の前払いです。
こちらは「借りる」のではなく、働いただけの給料を給料日前に払ってもらう方法です。
例えば月末締めの会社で、4月15日まで働いたとします。
この場合は4月1日から15日までの給料を前払いしてもらうことができます。
なぜ前払いなら確実なのか。
それは前払いが労働基準法によって認められている権利だからです。
ただし、何でもかんでも認めていたのでは、会社の給料体系が崩れてしまいますので、非常時のみ前払い請求ができる仕組みになっています。
前払いできる条件
労働基準法により前払い請求できるのは、次の条件に該当するときと決められています。
労働基準法第25条では、労働者が、出産、疾病、災害等の非常の場合の費用に充てるために請求する場合は、賃金支払期日前であっても、使用者は、既に行われた労働に対する賃金を支払わなければならないと定められています。
ここでいう「疾病」、「災害」には、業務上の疾病や負傷のみならず、業務外のいわゆる私傷病に加えて、洪水等の自然災害の場合も含まれると解されています。
勘のいい人は気づいたかもしれませんが、これは先ほどご紹介した「従業員貸付制度を利用する条件」とほぼ同じです。
払わないと業務に支障が出ると判断された場合のみ、前払いが認められます。
このため、飲み会のお金がないといった浪費の場合には、前払いを請求できません。
給料なので返済不要
前払いのメリットとしては、給料なので返済しなくてもいいということです。
自分が働いた分の対価を支払ってもらうだけですので、利息もかかりません。
返済に悩まされないのは、かなり嬉しいですよね。
ただし、次の給料日には前払い分が差し引かれますので、家賃や光熱費などの引き落としで、口座残金が不足する可能性があります。
もちろん、そのお金を勤務先から借りることはできませんので、結局は短期間のうちに別の方法で調達しなくてはいけません。
給料を前払いしてもらうほどの状況での前払いは、自分の首を絞めることになりかねません。
前払いしてもらうにしても、数万円以下にしておきましょう。

勤務先から借り入れ困難な場合はカードローンがおすすめ
勤務先からお金を借りることができるとはいえ、やはりその条件は限られてしまいますし、前払いのように、給料日後の家賃や光熱費などの支払いで困ることになる可能性もあります。
そういう意味では、借入先としては銀行や消費者金融のカードローンも検討しましょう。
カードローンは限度額の範囲内で何度でも借り入れできるローンで、カードローンによっては初めての利用なら金利が30日間無料になるようなサービスもあります。
申込みをしたその日に融資を受けられるローンや、スマホアプリで簡単に申し込みできるローンもあります。
会社に勤めている人なら、審査のハードルもそれほど高くありませんので、そのような借入方法もうまく活用して、最適な方法でお金を調達しましょう。
勤務先からお金を借りるのはいざというときだけにしよう
昭和時代であれば、社長のさじ加減ひとつで会社からお金を借りるということができましたが、すでにそういう時代ではなくなりつつあります。
きちんとした理由があれば、借りることができますが、旅行や浪費のためのお金は借りることができません。
また、勤務先からお金を借りるということは、会社の人にお金に困っていることを報告するような行為でもあります。
借りる理由にもよりますが、手元にお金がないというのは、貯蓄がなくお金に関してルーズな人という印象を与えてしまいます。
このため緊急時の借入先として覚えておくと、いざというときには助かるくらいに考えておきましょう。
どうしようもないときに頼るのはいいのですが、通常の借入れは銀行や消費者金融のカードローンを利用することをおすすめします。